ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

風が強かった日(ss)



いきなりの突風に飛段はあおられる。強度を増す風は気体というより弾力のある固体のようだ。さすがの角都も歩きなずんでいる。雨まで降っている。濡れたコートが重く硬くはためく。経験豊富な角都は単純に天候を疎んじているが、若い飛段は興奮している。下から吹き上げる風と雨に抵抗するべくコートの前をつかんで紅潮した顔を角都に振り向け、風に吹き散らされて届かない言葉を、笑いながら角都に投げかけてくる。嵐の中で囀る奇態な鳥のように。