ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

悪者(ss)



飛段がまた妙なものを買ってきたようだった。だらしなく口元を緩ませながらコソコソと自室に入っていく。あと半時もすれば、秘伝の巻物を買ったのに術が相変わらず使えないだの死なないヒヨコだって言われたのに死んだだのと、怒ったり嘆いたりしながら出てくるのだろう。戦闘で発揮される天性の勘は日常では眠っているらしく、飛段はいつもたやすく騙される。バカが、と心底呆れながら閉まるドアを見やる角都の視線には、憧憬と自虐とがないまぜになっている。人間の卑劣さを見破ることができるのは、心中に同じものを抱える同類だけなので。