ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

春雨(ss)



ずたずたになったコートを角都は捨てた。雨は戦闘後の興奮をなだめてくれたし、ズボンと頭巾は無事だったので、角都としては特に衣服に気を使うことはなく、それは帰路の街を通過する際にも変わらなかったのである。人通りの多い広場を歩いているとき、隣を歩く飛段が急にごそごそと鎌を外すと自分のコートを脱ぎ、それを角都に着せかけてきた。邪魔だ、と払いのけても諦めない。相棒の意図がわからないまま、いさかいが面倒になった角都はコートを引き受けることにした。濡れそぼって暖かいのか冷たいのか不明な、しかもサイズの合わないコートを肩に引っかけて歩く角都の隣を、肌に直接ワイヤーと鎌を巻きつけた飛段が行く。見た目の奇矯さは先ほどと変わりないが、飛段は満足そうだ。コートの着心地はともかく、角都も内心悪い気はしていない。