ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

啼鳥(ss)



飛段が相手をしとめた。なかなかの使い手で、長じれば良い賞金首になったかもしれないが、その可能性は今日で絶たれてしまった。術の応酬による混乱がおさまった今、飛段と相手は似たような恰好で新鮮な血を垂れ流して横たわっていた。生き物の生息には不向きな、草さえ生えていない岩山だというのに、俺にはわからない方法でどこからか情報を得たカラスが群れ集ってきた。ばさ、ばさり、こああ、こああ、ばさ、ばさり。大胆な数羽が、俺を警戒しつつ死体を啄みに地面を飛びはねてきたが、似たような二つの人体のうち、なぜか飛段には近寄らない。やはり俺にはわからない能力であれは死体ではないと判断するらしい。彼らはそろってもう片方の死体に寄り集まると、太いくちばしで肉をほじくりついばみ始めた。と、自分を地面に串刺しにした飛段が、突然片脚をびくりと動かした。どうやら、まだ死に切っていない相手から飛段へ痛覚が発信されたらしかった。意識が完全に失われているのに反応を見せるとは律儀な体だ、と俺は考え、その奇妙で猥褻な仕組みに興奮を覚えた。常になく興味深く儀式を見守る俺の前で、カラスは飛段を蹂躙しつつ、腹を満たし、仲間と語り合っていた。ばさり、こあこあ、ばさ、ばさり、と。