ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

春眠(ss)



何かが寝ているオレの頭に軽くふれた。はじめは風に吹かれた草かと思ったけど違うような気もした。長い足でふらふら歩く虫かもしれない。春の野で寝ていれば良くあることだ。虫の奴らが襟から入りこまないよう寝返りをうったオレは、不自然に変化した風向きに目を開き、早朝の青い空気の中、ほんの鼻の先に座る角都の膝を見たと思った。ぼうとしてそのまま眺めていたら、光が遮られたみたいに急に目の前が暗くなってきて、オレはまたとろとろ眠りながら、さっきと同じ何かが眉をなぞり頬を降りていくのを感じていた。ああこれが、春、なのかもしれない。