ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

不安、混乱、安堵(ss)



今日の相手が使った起爆札をうまく避けなかったオレに、相棒がいかにもジジイらしく、もっと危機回避能力を高めよ、というつまんない説教をした。もっと注意深くなれ、相手の動きを先回りして考えろ、爆音を聞いてからの反応では遅すぎる、衝撃波は音よりも早い、音は過去のものなのだから。ハイハイとやり過ごしたんだが、実のところ何の話なのかさっぱりだ。それが顔に出たんだろう、角都は分別くさく溜息をついて、音の速さやら光の速さやらについて講釈を垂れてきた。奴が言うには、オレたちが見るもの聞くものが全部過去のものなのだそうだ。音の方がより古いらしい。例えば、今3mちょっと離れているオレたちは、互いに百分の1秒昔の声を聞き、一億分の1秒昔の姿を見ているのだと奴は説明した。状況が読めないときは音に頼らずいったん引くべきなのにお前はいつも、と小言は続いたけど、オレは急にそわそわしてきて話が耳に入らない。じゃあ角都に何かあってもオレがそれを知るのはその後なんだ、なんて気持ち悪いんだろう!せめてその百分の1秒や一億分の1秒を縮めたい一心で寄っていくと、説教の途中だった角都に、ちゃんと話を聞け、バカが!と拳骨を食らった。マジで涙が出たけどオレはちょっとほっとしている。たった今、オレは痛みと共にある、なら角都ともリアルタイムで一緒ってことだよな、な!