ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

セーキョーイク(ss)



春のがさやぶの中で犬のやり方を真似ているとき、角都、てめー今までガキを作ったことはあんのか、とだしぬけに尋ねられたので、ついまともに考えた。長い年月の間、大勢の女が俺を通り過ぎていったし、同じ女と続けて関係を持ったこともある。偶然根づいたものを彼女たちが産んでいたとしたら、と、そこまで考えてそのご都合主義ぶりに俺は自分でぞっとした。記憶にある俺の行為はいつも殺伐としていて、女たちがそこから何かを得たとは到底思えなかった。妊娠の兆しがあれば彼女たちはすぐに堕ろしただろう。俺に子などいない。そっけなく言い捨てると、飛段は後ろ頭で頷き、やっぱそーかぁケッコンしねぇとガキはできねぇよなぁゴムしなきゃなんねぇもんなァ、と恐ろしく的外れな、しかもモラルの高そうなことをかすれた喉声で言った。バカが、と習慣で罵りながらも俺は、頭の悪い滑稽な発言に一瞬救われたと思ってしまった。犬の真似をやめ、相棒を仰向けに引っくり返して折り曲げて、紅潮したしかめっ面を眺める。バカってなんだよオイ、と威厳のない恰好で凄む飛段。考えてみれば最中に顔を見たいなどと、こいつと出会う前には思わなかったかもしれない。覆いかぶさりながら俺はうそぶく。お前の理屈は間違えている、子作りは死にゆく者だけの特権なのだぞ、飛段。