ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

動くこと(ss)



相棒が軽やかに鎌を振り回し身を翻すのを確認しながら角都は風遁と火遁を発動し、飛段の死角にあった数人を始末した。風で綯われた炎の縄をくぐって飛段は岩場を駆け昇り、飛び道具を霰のように浴びながら相手側の統率者を追いつめる。一段と大きな飛び道具を視界の端にとらえた角都が短く叫ぶ。後ろだ、飛段。投げつけた鎌のワイヤーを手繰り、グンッ、と大きな弧を描きながら飛段が空中で姿勢を変え、アクロバティックな舞のように飛び道具をやり過ごす。てめーはてめーの頭の蝿を追えよ角都。余裕を気取る相棒のサポートに偽暗を放つと、角都はまだ数多く残る術者たちに集中する。だれもかれもが生き残るための算盤をはじき、持てる限りの技を繰り出してくる。身を硬化した角都は無駄なく滑るように動き、一人ずつ確実に仕留めていく。戦場のルールは単純だ。殺して殺して最後まで動き続けるものになるため、恐怖と怨嗟にまみれた魂を引きちぎりつつ、角都は異形の腕をうねらせ、相棒とは異なる種類の舞踏を踊り続ける。