ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

防備せず(ss)



当初考えていたよりもしぶとかった忍び崩れを一人ひとり片づけ、最後の術者に角都が硬化した腕を飛ばしたとき、やはり他の忍びを屠ったばかりの飛段がまさにその相手を目がけて上空から飛び降りてきた。引くには勢いがつきすぎていた角都の手は、いきなりその場に現れて術者を打ち倒した相棒の胸部に中途半端な速度でめり込んでいった。角都は制御しきれなかった攻撃を相棒がかわすことを望んだが、飛段はただぽかんと突っ立ち、体内に侵入してきた相棒の硬い指に心臓をつかまれるままになっていた。熱くぬるつく臓器を損なう寸前で動きを止めた角都は(別に握りつぶしても良かったのだとは後で気づいたことである)少しムッとして相棒を睨んだ。とろいぞ飛段、この程度の攻撃なら簡単に見切れるだろうが。んー、と飛段は曖昧な顔をした。それって多分逆なんじゃね?すげースピードでなんかが飛んできたらよけるけどさ、のろいとつい見ちまうんだよ、それに相手がオメーだといまいち本気でよける気にならないっつーか。言いながら、飛段は胸に生えた相棒の腕を握るとずるりと引き抜いて、赤く汚れた指を無造作に舐めた。まるで自分の指を舐めるような自然な仕草だった。指の股を舐められた角都は慌てて自分の腕を引き戻した。相棒の変な理屈ともども、この状況はまったく理解の範疇外だ、と角都は考えた。もっと自分以外の人間を警戒すべきではないのか、相棒も自分も。