ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

悪ふざけの報い(ss)



殺したばかりの相手の体からピンピンと跳ねてきた虫を飛段はつかまえ、じっと観察した。沈む船を見捨てて次の宿主を探す蚤たちだ。おいていくぞ、と唸るように言い捨てて先に行く相棒に駆け寄りながら数匹の虫をコートの襟首から落とし込んだのは、ちょっとしたいたずら心によるものだった。いつも自分に口うるさく意見をする相棒の困った様子を見てみたかったのである。しかし、期待に反して相棒は常と変わらず平然としていたので拍子抜けした飛段は自分のいたずらを忘れ、そのまま夜を迎えたのだ。不意に強い痒みを感じた飛段はボリボリと腹を掻きながら目を覚まし、内心まずいことになったと思った。なんらかの理由で、蚤は宿主として角都ではなく飛段を選んだらしい。翌日得意の動体視力で見える限りの蚤を殺戮した飛段だったが、その夜、前夜にも増して激しい痒みにさいなまれ、おちおち眠ることもできなかった。数日間耐え忍んだ飛段は、誘いを強く拒絶することを怪しんだ角都に裸に剥かれ、とうとうすべてを白状する羽目になった。腹回り、背中、脚、陰部に至るまで飛段の体は赤い点々に覆われていた。これはこれは壮観だな、と、先ほどまでの不機嫌はどこへやら歌うように角都が言った。蚤はさらさらの若い血を好むらしいぞ、よかったな飛段。うなだれた飛段が呻く。オレが悪かったからいじめないで助けてくれよ角都。もう少しいたぶって遊びたかった角都だが、ひどく辛そうな相棒の様子に対策を取ってやることにした。かくして水遁で洗われた飛段は、同じく洗濯されたコートが干された木の下で相棒にヨモギの汁を塗ってもらいつつ、剃毛された己の下腹部を眺めて悲しいため息をつくことになったのである。