ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ともに映画をみる(ss)



飛段が訪れたとき、珍しく角都は部屋の照明を落とし、ベッドのヘッドボードにもたれるようにして手元のパソコンで映画を見ている最中だった。ちらりと飛段に目を向け、億劫そうに壁際へ寄ったので、飛段もベッドへ上がりこんで一緒に映画を見始める。途中からの映画は場面転換が目まぐるしく、大勢の登場人物の中で飛段は迷子になってしまう。なあ角都、こいつどっちの味方?こいつは?でもあいつの手下だぜ?スパイ?どっちの?ぽろぽろ転がる質問に短く、しかし怒らず律儀に答える相棒に、今日の角都はずいぶん疲れているようだな、と飛段は思う。こいつホントに仲間を裏切ったのかよ、それともフリ?しばらく待ってみたが、今度は答が返ってこない。飛段はしばらく一人で映画を見ていたが、やがてその動く光に照らされて眠る相棒ばかり眺めるようになる。プログラムが終わってモニターが暗くなると、飛段は再び動画を再生する。角都と見る映画は楽しい、と飛段は考えている。モニターから視線を外したまま。