ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

もとを取る(ss)



平日昼間だというのに成人向け映画館には複数の客がいた。換気の悪い客席で互いに距離を取って座る男たちを飛段は見渡した。激しい絡みが繰り広げられているスクリーンをよそに、客はみんな死んでいるように静かで無気力だ。あおのいて眠っている者もいる。隣の相棒は熱心に前を向いているが、その視線は前方に座る賞金首の後ろ頭にひたと据えられている。角都は別として、と飛段は考えた。こいつらみんな枯れているんじゃなかろうか、こんな画面を見て誰も興奮のそぶりもないなんて。肌色のスクリーンから目を逸らしても、音は容赦なく耳に侵入して飛段の官能を刺激する。居心地悪くもぞもぞしたあげく席を立った飛段は、扉にたどり着く前の暗い壁際で、追ってきた角都につかまった。どこへ行くのかと問うた角都はトイレに行くだけだと訴える飛段を壁に押しつけ、相手の股の間に自分の脚を割り入れた。自分よりも脚の長い相棒の太腿に乗ってしまった飛段は、片足を上げて逃れようとしたがうまくいかず、よじれた体勢でもがくうちに口をふさがれコートをはだけられてのっぴきならない状態に追い込まれた。ぐい、と太腿で相手の股間をつぶすように擦りつつ、角都は相棒の耳元でささやく。こんなちゃちな映画で欲情するガキめ、しょうがないから始末はつけてやろう、賞金首はお前が見張っておけ。無茶苦茶な論理を聞かされ口をふさぐ手で強制的に顔を横向きに固定された飛段は、賞金首の後ろ頭とスクリーンを見続けなくてはならなくなる。つま先立ちの両足をほとんど宙に浮かせて守るべき股間を角都の太腿に押しつけ、中途半端に脱がされたコートに両腕を絡め取られた相棒の不自由な肢体を、暗がりに慣れた目で角都は鑑賞した。映画中の男優にならって胸に触れると、腿にひくひくと相手の反応が伝わってくる。悪くない、まったく悪くない。つまらない映画に払ってしまった金の値打ちは充分にある。これならば賞金首と間違えてしまったあの男は勘弁してやってもいいかもしれない。