ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

テイクアウトの料金はあいつから徴収してやろう(ss)

某A様(笑)から「スペアリブ」というお題をいただいたので。



仕事がうまく片付いたので、労いとして今日の連れに食事を奢った。先輩なんか食べたいものありますかぁと尋ねると、飛段は、おぅトビよ先輩に奢るとは大したもんだなテメー、とニヤニヤしたが、おれが本気だと知ると真顔になり、いいのかよオレの好物はたけーぞ、と前置きしてスペアリブが食いてぇと答えた。世の中いろいろな珍味があふれているのに、多分どこかで食して気に入ったのだろうスペアリブを、まるでとても高級なもののように発音する飛段におれは面の下で失笑した。どこに行ってもラーメンを注文する子どもと同じだ。きっと他にろくなものを食べたことがないんだろう。まあアレが相方なのだから無理もない。なのでおれは自分が知る限りいちばん評判の高い店に飛段を連れてゆき、スペアリブを注文してやった。ナイフとフォークを早々に諦めた飛段のまわりの目を気にしない食べっぷりが気持ちよくて、おれは皿を追加し、手や口元を油だらけにして肉を食う男を眺めた。不死が売りではあるが戦闘能力もかなり高いこの男を、角都はときおり不当なぐらいこき下ろすが、決して手放そうとしない。飛段さんおいしいですかぁ、と訊く俺に、うめぇ、とだけ答えて顎を動かしていた飛段は、ふと顔を上げ、ばつが悪そうに、オレぜんっぜん金持ってねーんだ、と言った。つまらない形だけの遠慮を見せられて鼻白んだおれは、いくぶん冷たい声で、あれー今日はおれが奢るって言ったじゃないですかーと返したが、飛段は頬と鼻の頭を赤くして、いやそーじゃねぇんだと言った。オレが食う分にゃいいけどよ、その、なんだ、角都にもちょっと持って帰ってやりてぇなって思って、でもオレ今金ねーし、だからトビ、帰るまで金貸してくんねーか。ちょっと絶句していたおれは慌てて、金なんていいですよー先輩からそんなの受け取れませんよーと返したのだが、その時の飛段の顔を見て、おれは初めて角都に嫉妬したのだった。