ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

恥の種類(ss)



不死者は失神などしないものだと思っていたがな。そう角都に揶揄された飛段は、失神なんてしねーよバーカてめーがしつこいから眠くなっちまうだけだっての、と言い返しながら予想外の恥に身を焼かれる思いをした。臨戦態勢の相手の前で先に意識を失ったらその後何をされても文句は言えない、すなわち負けということだ。これはダサい。二度と醜態をさらすまいと決心していた飛段だったが、今夜も散々にやっつけられてしまい、意識を取り戻したのは既に角都が離れた後のことだった。シーツにうつぶせに横たわり、またいいようにやられてしまった、と遅い後悔をしながらも、飛段はこすからく策を巡らせた。水音からして角都はシャワーを使っているらしいが、終わればまたベッドに戻ってくるだろう。そうしたら機を見て「へっ、もう終わりかよ」とか「ものたりねーけど今日のところはこれで勘弁してやるぜ」とか、さもオレはちょっと休んでいただけ!というセリフを吐いてやるのだ。そう決めて安堵した飛段は不覚にもうとうとしてしまい、タオルで顔を拭かれてやっと覚醒した。すぐさま言うはずだった先のセリフをためらったのは、自分に触れる角都の手がとても穏やかだったからである。起こさないための配慮だろう、タオルは温かく湿っており、痛めつけられた飛段の体を静かに清めていた。拭かれているうちにすっかり名誉挽回の機を逸してしまった飛段は、清拭が終わってもセリフを吐くことはおろか目を開けることすらできなかった。ベッドのそばに膝をついた角都が自分の顔を覗き込んでいる気配があまりに濃厚で、至近距離でそんな相棒の顔を直視するぐらいなら失神をからかわれるほうがまだマシだと思ったからだ。つまり、ひどく恥ずかしかったのである。