ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

誤算(ss)



俺に単独の仕事が振られたとき、デイダラとふざけあっていた飛段は特に何の反応も見せなかった。大名との交渉が中心だが当然戦闘力のデモンストレーションも求められるだろう、お前なら腕もたつし金についても任せられる。そう告げるペインに俺は頷いた。命令は絶対だし、収入に直結する要務ならなおのことだ。長い逗留にも耐えられるよう準備を整え翌朝の出立に備えた俺は、以前自分の留守時に不安定さを露呈した相棒を案じたが、予想に反してその夜相棒は訪れなかった。正直物足りなく思いながらも俺は安心して休んだのである。だから、今朝になっていきなり右隣に滑り込むように現れた飛段が、面白くもなさそうに強い雨の中をバシャバシャと共に歩き始めたとき、俺はわけがわからず、何だ、と尋ねたのだ。飛段は答えなかった。何を考えているのかわからない相手に関わるのが面倒くさく、俺はそちらを無視して速い歩調で先を急いだが、いつもなら遅れを取る飛段が今日に限ってしっかりとついてくる。半時ほど進んだところで根負けした俺は、立ち止まって相棒へ向き直ると、もう帰れ、と言った。全身ずぶ濡れの飛段は両腕をだらりと下げ、肩で荒く息をしていた。唇の雨粒を吹き飛ばしながら何か言ったようだが聞き取れない。言いたいことがあるのなら前夜に言えばよかったのだ、こんな天候の中、すべてにおいて遅すぎる時間に何かを言われたところで俺にはどうしようもない。いい加減にしろ、足手まといはいらん、迷惑だ。きつく言い放ってから濡れネズミの頭に俺の笠を乱暴に被せて踵を返す。ガツガツ歩く俺の背が気配から遠くなっていく。腹が立ってしょうがない、道々仕事について計画を立てようと思っていたのに集中が途切れてしまった。その上ひどい喪失感が俺を苛む。どうしたことだろう、笠がないのがこんなにもこたえるとは。