ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

無為の夜(ss)



なぜ目が覚めたのかよくわからない。俺は闇に慣れた眼をじっと凝らすが、外敵の気配は確かに無いので上半身を起こしてみる。無風だ。夜空は雲でふたをされており、湿った空気が圧力を感じさせる。淀んでいるわけではないのに息苦しく、俺は大きくため息をつく。無駄に起きてしまったことを認めたくなくて俺は立ち上がり、少し離れた木の根元で用を足す。乾いた地面に「ヒダン」と小便で文字を書きちらし、じきに雨が消し去るだろう落書きに寒い笑いをかみ殺して、他に使い道のない孤独な男根の水気を切る。初めての移動経路は深夜の移動には向いておらず、相棒とも離れている今、俺には他にすべきことがない。