ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

庭ではハトがチューしてやがる(ss)



そいつは角都を別の名前で呼んだので、オレはてっきり人違いをしているんだと思った。こんな変わった見かけの奴が他にもいるんだな、と角都を見たら、角都もそいつの顔を見て名を呼んでいた。えええ、と驚いている間にそいつは角都に近づいて親しげに話しかけ、肩に手を置き、すぐそこの小料理屋を指さした。バーカそんな高そうな店に角都が入るかよ、と思ったのに、相棒はオレの予想を裏切ってすたすたと店へ向かい、おい角都!と呼ぶオレを今気がついたみたいに振り向くと、しばらく好きにしていろ、と言い捨てて入っていった。拗ねたかったけどそんな暇はないのでオレも慌てて続いた。変に狭い座敷に入った二人は小さな座卓に向き合って座り、久しぶりだな、あぁあ、なんて糞みてーな会話をし、気取った女が運んできた酒をちびちび飲みだした。オレの座布団はなく盃も二人分だけだ。ちょっとへこたれそうになるけど我慢してオレは角都の背後に丸くなり、いやに低い位置にある小窓から木やら草やらを眺めるふりをした。角都は出て行けとは言わないが、オレのことをテッテー的に無視している。だからこっちも角都を無視して一所懸命に庭を観察する。姿勢を変えた時、偶然尻が角都の背中にさわったけど、奴が何にも言わないからオレもそれを押しつけたままにしておく。忍者の服を着た中年のモデルみたいなチャラチャラした野郎がときどきこっちを見るけど構うことはない。角都に好きにしろって言われたから好きにしているだけの話だ、角都のツレはオレなんだから。