ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

禁止効果(ss)



換金を終えて外に出た角都は眩しい斜陽に目を眇めた。手に下がる金の重みは嬉しいが、とにかく疲弊していた。出入口前の石段には相棒が腰をおろしていたが、これも己の膝の上に頬杖をついてぼうっとしている。角都が遅かったことについても何も言わない。数刻前、相手に武器を叩きこまれて負傷した口元もすっかり治り、薄桃色の下唇がだらしなく開いていた。それを無遠慮に眺める角都に飛段がうっそりと言う。なんだ、してぇのかよ。お前もだろう。言っとくが口は嫌だぜ。ああ。短い会話を終えて換金所の裏へ回った角都は、ついてきた相棒の腹をいきなり殴ると髪をつかんで悠々と口を使い始めた。飛段が抵抗のそぶりを見せるとさっさと引き抜き、無理やり立たせた相手を壁に寄りかからせ、その急所を手荒く引っぱり出して握る。罵声を吐こうとした飛段はすぐに歯を食いしばり、眉根を寄せ、しまいには背後の壁ではなく自分を手ひどく扱う男の肩に寄りかかってしまう。先を揉まれた飛段が達すると角都は再び拳をふるい、またもや相手の口を使い始めた。殴られたせいか疲労のせいか飛段はもう抵抗せず、地べたに尻をつけて両脚を投げ出し、頭を角都と壁に挟まれるままになっている。まったくこいつのせいで時間を無駄にしてしまう、と角都は考える。あのまま旅程についたはずなのだ、口は嫌だ、などとこいつが思わせぶりなことを言いさえしなければ。