ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

他の方法なんて知らない(ss)

「禁止効果」の続きを読みたいと言ってくださった藤堂様へ。



すぐそばの排水溝から汚臭が立ちのぼっていた。じめじめと湿った地面に腰を落としたまま飛段は動かず、耳孔から流れた血に蠅が二匹寄りついた。死んではいないが死んだように静かに項垂れる飛段を見て、角都は何やら後ろめたくなり、美しい皿を割った幼子のように自分が乱したその姿をぎこちなく整えようとした。不自然に露出した部分を服で覆い隠し、髪を撫でつけ、汚れた顔を手巾で拭う。汚水の臭気が気になった角都は、動こうとしない飛段を腕に抱えて移動しようとした。いつも悪臭を嫌う相棒を今さら慮ったのである。揺られて肩に乗った頭がぼそぼそと呟く。あーあ、テメーにゃもううんざりだって言おうと思ったのによ。角都が急ぎ目を向けるが、薄い瞼は開かず、半ば開いた唇からも粘液が垂れ落ちるばかりである。空耳だったのかもしれない。角都は地に膝をついた中途半端な態勢で、何度か指で相棒の唇を拭い、しまいには濡れたそれに自分のそれを合わせ、舌を入れた。暴力と慰撫を繰り返して倦むことのない自分は、狂っているか、それとも病気なのだろう、と角都は考えた。相手の口に残る己の残滓がひどく苦かった。