ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

さあ、しっかり歩け(ss)



ひどく寂れた町のガード下に、ビールケースを並べただけの簡素な飲み屋があった。丸刈りの太った男が小ぶりのドラム缶に熾した火の上で何かの臓物を焼いていたが、乱暴に置かれた皿の上のそれは色がたいそう悪く、においを嗅ぎに来た野良犬もブシッブシッとくしゃみをしながら急ぎ退散していくのを見て、俺はただ酒だけを頼んだ。飛段も真似た。街灯の弱い光のもとで、とにかく安いその酒を俺たちは黙ったまま盛んに飲んだ。暑さがやわらがない夜だったし、水に浸かった瓶の中身はそれなりに冷えていたからである。やがて店がたたまれ、路上に戻った俺たちは再び移動を始めたが、酔いながらも歩けていた相棒の足取りが次第に怪しくなり、俺からだいぶ遅れた。大人げないとわかっていたが、俺はさっさと角を曲がり、そこでじりじりと相棒を待ち、すぐに待ちくたびれて元の通りを覗いた。飛段は球が点いたり消えたりする街灯に寄りかかり、まるで孤独な者のようにじっと立っていた。酔いが回ったのか、あるいは怠けているのか、どちらにせよ動く気はないらしい。俺はさらにしばらく待つことにした。確かに今日のいざこざは俺に非があった、そうではあるが謝ることはやはり難しい。なので俺は自分に約束をする。相棒が自力でこの角まで来たならばこちらから折れよう、そうしてあれをおぶってあれの望むところまで行ってやろう。だから早くこちらを見てここまで来い。なぜ動かないのだろう、どこか痛むのでなければ良いのだが。ああ、それにしても今までこんな思いで誰かを待ったことなどあっただろうか。