ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

さあ、しっかり歩け2(ss)

「さあ、しっかり歩け」の続きを気にしてくださったヴェスタ様に。



相棒が先に行ってしまった。バーカ、バーカ、テメーなんかどこへでも行っちまえ!こんなひとり言の中ですら、死んじまえ、と言えないオレは奴よりも命の大切さを知っているに違いない。今日、奴は儀式中のオレの陣を土遁で壊し、慌てて新しい陣を描いている間に大事な贄を勝手に屠ってしまった。台無しだ。その上、お前がノロノロしているのが悪い、などと抜かしやがる。オレは最初ギャンギャン文句を言ったけど、途中でしらけて黙った。なんだかんだ言ったところで奴がオレに合わせて変わるなんてことはないんだから。さっき酒を奢ってくれたけど、その間もひと言も口をきかないから、なんだか通夜みたいな酒になった。奴の金だと思ってガブガブ飲んだのが間違いだったんだろう、あのガソリン臭い酒は飲んだ時には酔えなかったのに今になってオレの足をふらつかせる。これは奴の金の崇りかもしれない。持ち主に似ていやらしい金だ。なのにオレは奴を嫌うことさえできないんだ…。歩くのをやめてそんなことをつらつらと考えていたら、暗い道がさらに暗くなり、よく開かない目を上げると思いがけない近さに相棒の顔があった。どうした飛段、具合でも悪いのか。こんな時に優しい言葉をかけてくるとはなんてずるい男だろう、遅いぞとか殺すとか言ってくれりゃいろいろ簡単なのに。無視して歩きだそうとしたけど足のヤローが言うことを聞いてくれない。しかたないから、オイさっさと手ェ貸せ、歩けねぇだろーがと言うと、相棒はそうかと言ってオレの肩をつかんだ、ようだった。正直ひどく眠くて目が開かなくなっちまったし、何がどうなってるのかよくわからなかったけど、顔に風が当たり始めたからオレはそれなりにしっかり歩いているはずだ。相棒の声がやけに耳元近く聞こえるし、ときどきキスされているようなくすぐったい感じもする。けど、これはオレがひどく酔っぱらっててそんな気がするだけなんだろう、きっと。