ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

盗っ人(ss)

さくま様からのリク4「スイカの話」です。そういえばスイカの種は高蛋白の食品だそうです。おじいちゃん角都はポケットにザラッと入れているかもしれません。で、日頃「そんなもん食えっかよ」とバカにしている飛段が空腹で泣きだすと何粒か与えてくれるかも。



波のように大きな風がときおり俺たちを飲む、ひどく蒸し暑い夜のこと、夏の月がぬらぬらと照らす広大な平地を俺たちはひそやかに動き回っていた。気の早い飛段が手を出そうとするのを俺は何度か引きとめた。良いものは奥にある、長年生きて学んだことのひとつがそれだ。やがて予想をはるかに上回る光景が俺たちを迎える。無防備に転がる巨大な球体は弾く指の先で豊かな音を響かせる。各々二個ずつ抱えた俺たちは平地に隣接する岩場へ移動し、略奪してきたものに刃物をあてた。他人が丹精したそれはクナイの刃が触れるとすぐにパリパリと割れ、淫らな者のように自ら真っ赤な中身をさらけ出した。俺たちはそれを貪り、満ち足りると、余った果肉を踏みにじって辱めた。飛段に至ってはまるまる一個を岩に叩きつけて破砕した。ブシャッ!まるで殺人現場だ。甘く赤いものがどうしようもなく取り散らかった中で、飛段が俺を振り向き笑ってみせる。いかにもS級犯罪者にふさわしい無邪気な稚気あふれる顔で。