ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ごうじょっぱり(ss)



追いつめた相手を屠ろうと繰り出した鎌を絡め取られるまでは、こっちが押していたのである。オレは大事な武器を引き戻そうとしたけれど、相手はその隙に何か印を切り、奴の背後にいきなり生まれた穴ぼこにニュルッと頭から入っていった。オレの鎌を持ったままでだ。穴はでかい犬の肛門みたいにぎゅっと閉じたけど、ワイヤーは変わらずギュンギュンうなりながら袖を滑り出て穴に吸い込まれていく。どこに通じているかわからん気持ち悪い穴なんかに入りたくはない、けどこのままではオレもワイヤーに引きずられて鎌と同様肛門に飲み込まれてしまう。うねるワイヤーを掴もうとして失敗したオレは傍観している相棒に手を貸せと怒鳴ろうとして、やめた。ゆうべオレが誘ったのを奴がつっけんどんに断ってから、オレたちまだ口をきいていない。こんなことでオレから声をかけるのは業腹だ。一瞬の躊躇の後、オレは急ぎコートを脱ぎ捨て腕の輪っかと腰のリールを外した。ぐんっ、と左腕が手繰られたが、危うくオレの身から離すことに成功したそれらはちょうど尽きたワイヤーともども閉じた肛門にすぽりと飲み込まれ、穴もろとも消えていった。贄を逃した上にいろいろ一気に失い、それでもとりあえず自力で乗り切ってほっとしたオレは、いつの間にかすぐ隣に立っていた相棒に今さらぎくりとした。黙ったまま睨み上げるオレを黙ったまま見下ろしていた相棒は、ゆっくりとオレの左手を取り、ワイヤーにこすられて焼けただれた腕や掌、その他のところに触れた。オレは拒まなかった。地面に寝転がってしばらくたってから、こんなことしながら黙りこくっているのは変だと思い、オレ金ねーんだけどコートと武器どうしよと言ってみたら、相棒が心配するなと答えたのでそうすることにした。へっ、こっちが先に口をきいたから勝ったような気がしているんだろう。けど守銭奴のテメーに金を出させる約束させたんだから、今回の喧嘩はオレの勝ちだぜ、角都。