ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

そうか、寂しかったのか(ss)



ここしばらく異なる任に就いていた角都と飛段は夜のアジトで久しぶりに顔を合わせたが、どちらもひどく疲弊していてろくな挨拶も交わさなかった。あーあ、と飛段がわめくような欠伸をする。しけた野郎のツラ見てるとこっちまで不景気になるぜ。ひとの部屋まで押し掛けてそんなことを抜かす相棒をどう扱ったものかと、やっとシャワーを浴びてベッドに横たわったというのに休むことができない角都は考えた。殴ってやってもいいのだが、数日間強いられた消耗戦の後では腕を上げることはおろか声を出すのも億劫だ。反応のない角都に不機嫌な飛段は苛々と昂ぶりをぶつけてくる。へっテメーばっかり何でもできるつもりなんだろう、ああテメーは強ぇよけどちょっとばかし強ぇからっていい気になんなよ、お高くとまりやがってむかつくんだよそーゆーの、おい聞いてんのかよ角都。角都は物憂げに相棒を眺めていたが、やがて小さな声で、飛段、と呼び、間をおいて言葉を続けた。お前シャワー浴びてこい、待っているから。飛段は虚をつかれたように角都を見返したが、突然コートやズボンをかなぐり捨ててバタバタと浴室へ入っていき、ほんの数分で出てくると、あちこち濡れたままの全裸でベッドに上がりこんできた。先ほどと打って変わって黙りこくったまま濡れた頭を擦りつけてくる男を角都は受け入れ、覚醒と眠りの狭間で朦朧と考える。なんて単純な男なのだろう。これも俺も。