ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

暇な狂人の遊び(ss)



そのとき相棒は例の長たらしい儀式を終えたばかりで、血なまぐさい正円と正三角形の上で肌の色をカメレオンのように変化させているところだった。胸から生えた杭は俺の手の届くところでかすかに揺れていた。妙な気になったのは、強いて言えばそのせいだったかもしれない。俺は地面に横たわっている相棒の胸を踏んで杭を引き抜くとその上に腰をおろし、おい角都テメー!と抗議の声を上げる相手の喉をつかんで口づけ、己の舌を噛み破って生ぬるい体液を相手の舌へからめた。長く乱暴な接吻に白目を剥く飛段の苦痛が俺の神経に直に伝わる。俺にふさがれる口が、俺に絞められる喉が、俺につぶされる胸が重く苦しい。飛段が抗うのをやめると俺はようよう身を起こし、感覚の鈍った手で杭を握り直すと、それを相棒の、再び白黒に染めわけられた胸に突き立てて体重をかけた。杭がめり込んでいくにつれ、肉を裂く感覚が俺を貫く。俺は痛みに強いが致命的な痛みには慣れることがない。ヅン、と熱に似た疼痛に俺は目をかたく瞑り、続く虚脱の暗がりに堕ちていったのだが、ふと目を開くといつの間にか体勢は逆転しており、俺は憤怒相の飛段に円陣の外へ引きずり出され馬乗りにされていた。てめえ、と飛段が唸って拳で俺の頬を殴る。こんなこと、二度とするな、いいな、二度とすんじゃねーぞ。いいように殴られながら俺は体内の心音を確認する。どうやら遊びは失敗に終わったらしい。まぬけな結末に俺は笑いだしてしまう。笑いは動脈からの出血のように後から後から噴き出してくる。まるで発作だ。目の前の相棒の強張った顔も中途半端な胸の傷も見れば見るほど滑稽で、俺はぶざまに組み敷かれたまま狂ったように笑い続けた。