ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

悼む(ss)



はるばる賞金首の死体を運んできたってのに、目当ての換金所がつぶれていた。文字通り骨折り損のくたびれ儲けだ。おいおいマジかよここまで来たってのによォとブーたれるオレの横で、角都は腐りかけた死体を地面に置き、更地になったその場所をじっと見ていた。そういやここの主人と角都は古いつきあいみたいだった。換金所の表では古くさい薬屋をやっていて陰気な娘が一人いたが、あいつらはどこかへ行ったんだろうか。訊いてみたけど角都は答えなかった。奴はずいぶんと狭く見える更地をゆっくりと歩き、地面の一か所を長く見ていていたが、やがて戻ってくると賞金首の死体に火をつけた。燃しちまっていいのかよ、と尋ねると、紙銭の代わりだ、と答えてくる。あの者たちの国では葬式で紙の銭を焼き捨てて手向けとするという、これは換金可能な死体だから代用になるだろう。よくわからないが、角都はあいつらが死んだと考えて弔っているらしい。オレはちょっと考えたが別に悲しくもないので、テメー悲しいのかよ、と訊いてみた。いや、と角都が無表情に答える。死より悪い運命もある、彼らにとって死は救いだったかもしれん、現に昔は俺も。すらっと口走った角都はそこで言い淀み、急にオレの頭を小突いて、お前のバカは死んでも治らんだろうがな、と言った。なんだとテメーこそ死にかけのジジイじゃねーか。うるさい黙らんと殺すぞ。それをオレに言うかよ角都。そうしてオレたちは言い争いながらその場を後にした。相棒の悲しみを癒すために親切なオレはごまかされてやったのである。