ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

年季明け(parallel)



最近どうしたよとシカマルに訊かれた飛段は、友人の部屋の窓際に座り込み、別にどうもしねぇと答えて膝の上のマンガ雑誌をベラベラとめくった。相変わらずダメーな感じで生きてるぜ、ゲハハ、なめんなよ、オレのダメっぷりは筋金入りだかんな。それにしちゃずいぶん調子良さそうじゃねーか、とシカマルは言おうとして口をつぐむ。考え無しのところは確かに相変わらずだが、飛段はどこか変わった。死にたい死にたいと言わなくなったし唐突にキレて暴力沙汰に及ぶこともなくなった。虚無的に殺伐としていた友人をいつも心配していたシカマルにとってこれは嬉しいことである。けれども自分が独占していた素直な飛段を他の者と共有するのは、正直なところあまり面白くはない。そんなこんなで心中複雑なシカマルに、雑誌に鼻を突っ込んだままの飛段が、なんでオメーはオレたちとつるむんだ、と尋ねてくる。オメー大学でもえらく成績いいんだろ、オレらと遊んでもしゃーねーんじゃね。飛段が抜けて以来、元の仲間たちと疎遠になっているシカマルだが、それには触れず、遊びに理由なんかあるかよめんどくせーこと考えてんじゃねーよ、と答えておく。そうそう飛段、アンタもうバイト辞めてもいいぜ、昨日で四カ月たったから借金完済だ、角都にも最初に話しておいたから問題ない。んー、と飛段が相変わらず雑誌に鼻を突っ込んだまま興味薄そうに返答する。どうする、辞めるのか。んー、うち帰って角都と相談して決めるわ。まるで他人事のような言い草にシカマルは苦笑しつつ考える。あのときの十二万円で飛段をいかようにでもできたのに、自分はとんだ安売りをしたものだ。いや、安売りをしたのは飛段かもしれないし、角都の方だったのかもしれない。



※お題「安売り」