ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

チェンジ!(ss)

さくま様からのリク「いれかえ」と、こあん様からのリク「三角形」による小話です。さくま様、こあん様、いつもすてきなリクをありがとうございます^^。



角都が出かけてすぐに宿のオヤジがやってきて、お客さんデリヘルあるけどどうする、と言った。へぇいーねー、とオレはとりあえず返した。オヤジの口ぶりではデリヘルはいいものらしかったから。気に入らなかったらチェンジって言えば別のが来るからね、とオヤジが言って引っ込んだ。デリヘルってのは食べ物だろうかとオレは考えた。ここの特産かもしれない、取り換えられるんだから溶けたりはしないだろう、ならば角都にも残しておける。ちょっとわくわくしながら待っていたら、廊下に面した引戸が開いて中年の女が入ってきた。おいおいオバサン部屋が違うぜと言ってやったのに、女はズカズカ部屋の中まで入ってくると平気な顔でオレを見おろし、にせものの毛皮のコートの前を開いた。とぼけないでよ兄さんデリヘル頼んだでしょ。コタツに入ったままオレは仁王立ちの女を見上げた。コートの下は下着だ。布の面積が少なくていろんな意味でたっぷりしている体が丸見えである。変なもん見せんじゃねーよと言うと、女が、あはぁ、と笑った。赤く塗った口が大きく開く。そんな可愛い顔で睨んだって怖くないよ兄さん、なんだい恥ずかしいのかい、大丈夫アタシが気持ちよーくしてあげるから心配いらないよ。女はむき出しの腹をぴしゃりと打ち、腕組みした。堂々としていて部屋の主のようだ。オレはデリヘルらしいものを探したが女は手ぶらだった。よくわからないが間違えたのはオレの方らしい。不安になったオレはとにかく女を追い出したくて、チェンジ、と言ってみた。すると女は口を歪め、アンタ後悔するよここじゃあアタシが一番いい女なんだから、と言い捨てると引戸を開け、大声で、おじさーんチェンジだってー、と呼ばわった。結果から言うとオレはもう一回チェンジと言い、今三人の女に取り囲まれている。最初の女、2×4建材みたいにガリガリに痩せたのっぽの女、奴らより明らかに年長で髪をソフトクリームみたいに盛り上げた女。チェンジのたびにオレは前の女に出ていけと言ったが、だって暇なんだもーん、と女(たち)は聞き入れず、今では戦隊のフォーメーションのようにオレの前方左右と真後ろに一人ずつ、各々腕組みをして仁王立ちしている。にせ毛皮の下着女たちがデリヘルらしいということに遅まきながら気づいたオレは正三角形のまん中でわめく。わかったオレが悪かったって言ってんだろう、デリヘルはいらねーからテメーらみんな出てけ。だめよぅ、だめだめ、と女たちが口々に言う。チェンジはタダだけどキャンセルはお金かかるんだから、兄さん諦めが悪いねえ観念しなよ。テメーら殺すぞ。いいねぇ兄さん殺してよ早く殺してってばァ。三角形がだんだん小さくなり、旗色の悪いオレがコタツの中に逃げ込もうとしていたとき、引戸ががらりと開いて黒いコートが見えた。オレはとっさに、チェンジ、と叫ぶと2×4建材とソフトクリームの間を抜けて引戸に突進し、あっけにとられている角都と体を入れ替えて戸をぴしゃりと閉めた。おい待て飛段!という角都の声に女たちの声がかぶさる。客の方がチェンジしたよ、まあいいんじゃないアタシは気にしないよ今度のもいい男だし、何よ最初はアタシでしょアンタたちは見てなって、アンタたちこそチェンジされたんだから出ていきなさいよ、なんだいやろうってのかい受けて立とうじゃないの!そこまで聞いたところで宿を飛び出したので最後はどうなったのかオレにはわからない。けど三十六計逃げるにしかずって言うだろ、後で角都にこってり絞られるんだろうがそんなもんを恐れて勝ち目のない戦をする方がバカなんだぜ、なあ!