ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

おまじない(ss)



焚火のそばで、角都はクナイを丹念に研いでいる。さっきまでくだらないことを盛んに話しかけて相棒の気を散らそうとしていた飛段は、今では角都の背後で静かに動きをとめている。焚火からは白い煙がまっすぐに立ちのぼっている。しんしんと冷え込む冷気の中、やがて刃物を研ぎ終わった角都は自分の親指の腹で切れ味を確かめると、丸くなって眠る相棒に向き直り、んん、とむずかる飛段をそのたびに抱いたり撫でたりしてごまかしつつ、最終的には覚醒に至らせないまま仰向けにすることに成功する。コートを開かれズボンを下げられた飛段の下腹部に角都は屈みこみ、クナイを握る。プツ、プツと感触が手指に伝わる。数本でやめるつもりだったのだが、何やら興が乗ってしまった角都はそのままクナイを動かし、その部分の飛段の体毛をすべて剃り落としてしまう。本数が多い方が効き目があるかもしれんしな、と角都は自分に都合よく考える。白いもやもやの体毛は角都の指で器用にひとまとめにくくられ、財布代わりのアタッシュケースの中に収められる。こんなもので金がたまるとは妙なまじないだが、どうせタダなのだから試す価値はある。それにしてもこのクナイの切れ味は大したものだ。剃られた場所は完璧にすべすべになっている、舐めて確かめてみたから間違いない。