ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

汝の行為は汝を追う(ss)



受け取った金を数える角都の隣で手持ぶさたの飛段は膝の上に頬杖をつき、部屋の隅に据え置かれたテレビモニタを眺めている。アナウンサーが緊張した声で戦況を伝える。新型兵器による未曾有の被害という言葉に、まあ確かにオレたちは兵器みたいなもんだよな、と飛段は考える。モニタには瓦礫しか映っておらず、肝心の死体は注意深く画面から外されている。今さら何を隠すんだろう、と飛段はおかしくなる。戦争しているんだから死体があるのは当たり前だ。それにあの国は飛段たちが到着したとき既に腐臭に包まれていた。広場には数十本の人工的な杭が歪んで立てられ、その一本ごとに敵兵一人の死体がぶら下げられており、あたりをカラスが雲霞のように飛んでいた。忍でもジャシン教徒でもない人々がなしうる残虐行為に飛段は感嘆したものだった。なのに味方の死体はモニタにも映せないとは笑わせる。仕事の依頼主は満足げな様子で新たな仕事を角都に持ちかけている。これは角都の読み通りで、今度は先の国の対戦国が対象らしい。漁夫の利だな、と角都が言っていたけれど、殺戮ができるのなら理由はどうあれ飛段は気にしない。長たらしい商談に興味が持てない飛段はとうとう席を立ち、暗い階段を上って地上へ出る。街外れにあるこの建物の外には乾いた荒野が広がっていて、吹きわたる風の音が人声のように聞こえる。路傍にある古びた道路標識が傾いていて、そのせいか、明るく乾いた空気の中のからっぽの荒野はまるでそこに立たせる人工の杭を待ち受けているように見える。声に似た風になぶられながら、飛段は舞いたつ砂埃から顔をそむける。いずれこの場所にも奇妙な木々が立ち並ぶのかもしれない。