ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ウィンウィン(ss)



冬の野宿は寒い。夜更けになって寒さに耐えかねた飛段は先ほどまでの喧嘩をいったん棚上げし、隣でやはり丸くなっている相棒に身を寄せる。眠ってなどいなかったくせに今目覚めたふりをする角都は、その上さらに寝たふりをして相手の接近を許すという面倒な芝居をする。いったん接触してしまうとずうずうしくなる飛段は先方の芝居などには頓着せず、相手のコートの前を無遠慮に開いて懐に潜り込み、その喉元を覆う布に自分の凍えた鼻先を埋めて動きを止める。次は角都の番だ。自分のコートの袖から腕を抜いた角都は相棒同様相手のコートの前を開き、冷えて堅くなった手を、表面は冷えているが芯は熱い体に這わせる。密着してびくびく震える体が不機嫌そうに唸る。おいクソ冷てぇ手でさわんなよ。貴様が寄ってきたんだ、嫌なら離れろ。バーカ離れたらオレがさみーだろが。知るかさっさと凍え死ね馬鹿が。どうでも良い勝敗をめぐって二人は諍い続ける。心臓が六つある一匹の生き物のようにひとかたまりになって。