ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

この世の最後のような光(ss)



デイダラに初夢の話を聞かされたという飛段が俺の部屋に居座っている。くだんねー惚気話でやんの、とせせら笑いながらも相手の夢物語を細部にわたって俺に話して聞かせるところを見ると、何かよほど気に障ったことがあるらしい。いまだに正月気分が抜けないのかと呆れた俺は無視を決め込んだが相棒はへこたれず、寝台の縁にどっかりと座ったままくどくどと話を続ける。暖かい毛布にくるまって届いたばかりの古書を楽しんでいたというのにとんだ邪魔が入ってしまった。せっかくの古書にはもう集中できそうもない。一人の時間を諦めた俺は本を閉じ、肩を怒らせている相棒にデイダラの話はわかったからお前の初夢の話をしろと促した。一瞬むっと押し黙った相棒が、そんなん見てねーよ、とぶっきらぼうに返答する。一日も二日もオレぁ酒飲んで寝てたからよォ、そんなガキくせーもん見る暇なかったぜ。そうかそれは残念だ、俺の初夢にはお前も出てきたがな。とたんに眉を上げた顔がこちらを向き、そのあまりのわかりやすさに俺は衝撃を受ける。ハァー?何勝手にオレの夢なんか見てんだよ、どんな夢だよ教えろよ、角都ゥ教えろってェ!そう簡単には教えられない、ともったいをつけて俺は飛段を焦らし、さんざんせがませてからゆっくりと語ってやる。どこか異国の故事に似た話は盛り上がりもなくだらだらと続くが、飛段は敷布の上に寝そべって満足そうに聞いている。長い長い話の末、目的地に辿り着いた飛段と俺がこの世の最後のような光を見ているところまで語った俺は、話の続きを眠った者に委ね、手を伸ばして相棒のサンダルを脱がせるとその体を俺の毛布で包み、灯りを消す。久しぶりにいい夢が見られそうだった。