ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

居心地の良し悪し(ss)

こあん様からのリク「椅子取りゲーム」による小話です。いいお題ですね!こあん様、いつもありがとうございます!



氷雨の夜の野宿はつらい。忍であってもそれは変わらない。角都と飛段がやっと見つけた横穴は狭く、したたる地下水で水浸しだったが、それでも外よりはマシだった。腰を曲げて穴に入り込んだ二人は角都のアタッシュケースを地べたに置き、口ではやいのやいの言いながらも狭い面積を仲良く半分ずつ分け合って背合わせに腰を下ろしたが、しばらくしてその状態に非を唱えたのは飛段だ。こんなんじゃ足がつっちまうぜ、と文句を垂れた飛段はひとつの提案をする。なあ、かわりばんこに座らねえ?あぶれた方は座ってる奴の膝に座ればいいじゃん。ふん、と角都は鼻で笑う。そんなことを言って、お前ずっと俺の上に居座るつもりだろう。ひとを疑うのは良くないぜ角都よ、オレぁマジで言ってんだ、なんならテメーが先にオレの上に座れよ。いい加減自分もくたびれていた角都は冗談のつもりで相手の提案をのむことにする。かくして椅子である相棒の注文に従ってその膝の上に横向きに腰を下ろした角都は、飛段の腕でしっかりと胴周りをホールドされ、かすかにうろたえる。大事な相棒を落とすわけにゃいかねーもんなァ、と口角を上げて見上げてくる飛段が妙に男くさい。ううむ、と角都は心中で唸る。暖かい椅子に不満はないがどうにも落ち着かない。膝を揃えて背筋を伸ばし、まるで処女のように座る角都の背を飛段の手が撫でる。なに硬くなってんだよ、遠慮しねーでもっとくっつけよ、寒いだろ。くつろいだ男の声に角都はぞくぞくとし、文字通り飛び上がってしまう。こ、交代、交代しろ!掠れた声を張り上げる角都を、飛段はあっけにとられたように見ている。ハァ?まださっき座ったばっかりだぜ。貴様の痩せた腿の上にいつまでも座っていられるか、いいから代われ、早くしろ!えー、とぶつぶつ言う相棒を引き起こした角都は、急いでケースの上に腰を据え、相棒を膝の上にしっかり抱え込んで、やっと一息つく。変なヤローだぜまったく、と抱え込まれた飛段がぼやくが、強制的に頭を相手の肩に押しつけられ、ぼやきはもごもごと押し殺される。うるさいだまれ飛段、と角都が唸る。これでいい、いや、こうじゃないといかんのがわからんか、馬鹿が。