ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

俺がお前にしてやることを書いたら、紙がどれほどいるのやら(ss)

こあん様からのリク「イミテーション」による小話です。イチャイチャしているだけの甘話です。こあん様、楽しいお題をありがとうございました^^




目覚めたとき、俺の隣には安っぽい風船人形が横たわっていた。昨夜遅くアジトに戻ったときには見当たらなかったしろものだ。疲労した俺が泥のように眠っている間に誰かがこれを置いていったらしい。誰かが、と言ってはみたが、俺が気配に気づかなかったのだからあのバカの仕業に違いない。重だるい上体を起こして俺はあくびをし、目をこすってそれをよく眺めてみた。ビニール製で乳房も顔も描かれただけの、実に素朴な人形である。見覚えのあるズボンを穿き、首まわりにはペンで首飾りの線が書きこまれているところを見ると、これは相棒を模したものらしい。ためしにズボンを下げてみるとホールがある。好奇心から粗末なそこに指を入れてみた俺は、中から細く巻かれた紙を引っぱり出す。

さわられても起きねえのは忍者としてどうかと思うぜ
ねこみをおそわなかったおれに感謝しろ 
でかけるけどすぐに帰ってかわいがってやるからいい子でまってろよ 
ジャシン様サイコー 万歳

俺は紙切れを握りつぶして放り投げ、頭をボリボリ掻いてあくびを連発すると、再び枕に顔を埋めた。単独で気の抜けない仕事を片付けてきて休養を必要としていた俺にとって相棒がいないのは好都合だった。あれは空気を読まず勝手に言いたいことをしゃべってつきまとい、ずかずかと相手の間合いに入ってくるのである。俺は重い腕で風船人形を抱きよせ、半分眠りながら取りとめなく考える。人形はどうも新品のようだ、こんなグロテスクなものをあいつはどうやって入手したのだろう、空気が入っているものは抱いているとけっこう温かいのだな、あいつは今どこにいることやら。すべりの悪い人形の肌に触れながら、露出が多いせいか表面はひんやりしているくせに芯に熱のある相棒の肌について考え、俺はただふわふわと幸せな気持ちになる。観念だけで欲情できるほど若くないのだ…。そうしてうつらうつらしているうちに、ふと人形を満たす空気はあいつの息なのだと気づいた俺は、人形の唇に設けられた吹き込み口をあけ、ビニール臭のする空気を吸ってみた。が、どうもそのまま寝入ってしまったらしい。腕の中のものをもぎとられて覚醒した俺は、赤鬼のような形相の相棒に叱責されている己を発見する。なにキモイことしてんだよー、と相棒が怒鳴る。人形抱いてチューしてるなんててめーは変態かよ、あーっズボンも下げてやがる、ほんっとにド助平ヤローだな!相棒の手の中の人形はほぼ握りつぶされていたが、奴はそれをさらにドカドカと踏みつけ、くしゃりとしたぼろきれにしてしまった。床に落ちている紙切れも相棒の怒りに油をそそぐ。てめーオレの手紙を捨てやがったな、せっかく書いてやったのにひでぇぞ角都!過ぎ去った安寧の時間に別れを告げ、俺は上体を起こして吠える相棒を見返す。手紙は最後の一行が気に入らなかったのでな、捨てた。飛段はしわくちゃの紙切れを広げて最終行を確認すると、しぶしぶといったようすでその部分を破りとり、残りをこちらに渡してよこした。その手をつかんで引き寄せ、邪魔なコートを剥ぐと、俺はようやくビニール臭くない相手の呼気を吸いこみ、表面は冷たく中は熱い皮膚を思うさま撫でまわすことに成功する。ごつごつと抵抗があるが構わずにのしかかり、ホールに指を入れる。何度も探って確かめるが空っぽらしい。ならば今度はここに俺からのメッセージを詰めねばなるまい。