ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

遊んでいたつもりが、がんじがらめだ(ss)

こあん様からのリク「あやとり」による小話です。こあん様、いつもすてきなお題をありがとうございます^^




換金所から出ると、道端で相棒がガキとつるんでいた。正円と正三角形が描き散らされた路上で大小のガキどもがガラス玉を弾いて遊んでいる。名を呼ばれた相棒は集団から離れてこちらに来たが、おせーよいつまで待たせんだよ、と言う口調と裏腹に紅潮した頬はぴかぴかしていて俺は苦笑する。本気で遊んでいたらしい。その手からぶらさがる紐に目を向けると、視線を読んだ相棒は輪にした紐を自分の両手に通し、器用にいくつかの形を組み上げて見せた。さっき教わったんだ、あやとりっていうんだぜ、ほらこんなのできるかテメー。フン、女子供の遊びだな。へっできねえからって僻むなよ、オレが教えてやるからよォ。言うなり相棒は俺の左手を取り、親指と小指に紐を絡めると、自分の右手の中指でその紐をすくってあやとりの基本形を作った。ほら、こうしてこうやって、な、簡単だろ。振りほどくのは簡単だが、俺はおとなしく左手を相手にゆだね、異なる両手の間に張られる紐の緊張を、その紐を操る際に触れたりひっかいたりする相棒の指の感触を、存分に味わい、記憶にとどめようとする。マスクをしていて良かった。右手にアタッシュケースを持っていて良かった。でなければガキが遊んでいる往来で俺は何をしでかしたかわからない。不本意ながら、この歳まで生きて俺はまだ幸せにだけは慣れていなかったのである。