ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

起き上がれない(ss)

さくま様からのリク「桃色ほどの嘘をつき」による小話です。さくま様、かわいいリクをありがとうございます^^




調子が悪くて起きられない、と飛段が訴える。ずる休みであることははっきりしている。本当に体調を崩すと逆に飛段はそれを気取られないように常以上に動き回るからだ。殴って躾けるかとも思ったが、考えてみれば今日は大した用もない。ふと角都はいたずら心を起こし、飛段の嘘につきあうことにする。引きはがされないようにかぶった掛け布団の縁をつかんでいた飛段は、布団からはみ出ている頭頂部を撫でられて、ギョッとしたように顔をのぞかせる。ほう顔が赤いな、具合が悪いのならしょうがない、今日はゆっくり休むといい。人間はポカンとすると本当に口が開くのだなと角都は知り、目が笑わないように顔面に力を入れる。バカも罹患するとは最近はたちの悪い病気があるものだ、どれ、少し診せてみろ。大げさにすんなよ寝てりゃ治るって、とアワを食う飛段は油断したところで布団を奪われ、パンツも穿かずに寝ていたことを今更後悔する。起きあがれないとはさぞ重症なのだろう、内蔵か、骨か、それとも脳か。角都の手は有無を言わさぬ力をもって相棒の体を押さえ探っていく。こねまわされているうちに具合の悪いことになってきた飛段は、ホントに気持ち悪いんだってェ、と情けない声を上げてうつ伏せになるが、すぐにそれを悔やむことになる。角都は絶好調だ。本職さながらに相棒の体中を触診し、穴に指を入れて体温も計る。危機を感じた飛段がついに詫びを入れる。悪かった、調子なんかちっとも悪くねえ、今すぐ準備して仕事するから勘弁してくれよォ。哀れな声は顔に枕を押し当てられたことによって途切れ、モーモーという音に変わる。じっと寝ていろ、無理をするな、と言いながら角都は朝の光の中で相棒の尻にまたがる。飛段はどうにかして逃れようともがく。まだ起きあがれるかもしれない。今ならまだ。