ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

もったいない(ss)

さくま様からのリク「はんぺん」による小話です。さくま様、いつもありがとうございます!




露店で売っているおでんを食べたいと飛段が言い出した。どうせすぐに別のものが食べたいと言いだすのだろうが、俺も空腹だったし、季節柄おでんを食べるのも最後だろうといくつかネタを買ってみる。相棒に練り物とロールキャベツ、俺に大根と白滝とはんぺん。熱々の具を竹串でつつきながら食べていると、自分の分を早々に片づけた飛段が俺の顔を覗きこみ、うまい、なあそれうまい?としつこく尋ねてくる。ああ。いいなァオレもはんぺん食いてえ。俺は背後を振り向く。件のおでんやはまだ遠くない。金をやるから戻って買ってこいと言うと、違う、と言い返してくる。新しいのじゃなくてオメーの食ってるそれがいいんだよ。おおかた他人が食べているものがおいしそうに見えたのだろう、俺が食いかけのはんぺんを差し出すと、飛段は俺の歯型の上からぱくりとそれを咥え、半円型に食い切ると満足そうにニッと笑った。うん、うめぇなホント。俺は小さくなったはんぺんを紙コップに戻し、残りの白滝と大根をたいらげ、出汁まで飲み干してから、しぶしぶはんぺんの切れ端を口にする。すっかり冷めてしまったそれを惜しみながら噛み、飲み込む俺に、情緒に欠ける相棒がジジイは食うのがおせーなァと失礼なことを言ってくる。誰のせいだと思っているのだ、この馬鹿者めが。