ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

良心(ss)

こあん様からのリク「脛の疵」角都編です。こあん様、すてきなお題をありがとうございます。よろしければまた恵んで下さいませ!



疑い深い相手に取り入ってやっと隠し財産のありかをつきとめた角都は、まず相手を殺し、側近を殺し、その他の手下を殺した。褐色に染まった手を洗い、重たい袋を担いで帰路につきながら、角都は仕事を首尾よく片づけた自分の手際を喜ぼうとしたがうまくいかなかった。相手の信用を得る過程で自分の心を枉げなければならなかった記憶がいまいましかったのである。女と寝たことぐらいどうということもない、と角都は考える。今まで数え切れないほどの女と寝てきた、それが一つ増えただけだ。天涯孤独の身だと言ったのも嘘ではない、組んでいる仲間もいないと誓ったのはやりすぎだったかもしれないが、そんなことは目的の前では瑣末なことである。それにあの場にいた者は皆殺しにした、角都の言動を知るのは角都自身しかいない。自分に言い訳し終えた角都はアジトの手前で肉料理を買い、帰りついた自分を出迎える相棒にそのみやげを渡した。相棒が素直に喜んだので角都はひそかに落ち着きを失った。やましさ、という感情に慣れていなかったため、それが何かわからなかったのである。