ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

やむにやまれず(ss)



早朝、忍び崩れで構成された盗賊団を襲撃した角都は、累々と散らばる死体をざっと調べてから相棒を探しに行った。強い北風にちぎれ飛ぶ灰色の雲の奥の朝日はまるで沈む寸前のように弱々しい。芽吹いてきた落葉樹林の中で黒々と焼け焦げた一本の巨木が煙を上げている。その根元にぽとりと落ちている片腕を拾った角都は、しぶいている血潮を目印にさらに林の中へ踏み入っていき、ようやく賞金首の死体と相棒を発見する。地面に座りこんでうなだれていた飛段は、よう、と血まみれの顔を上げる。顔面の半分がよく見えないのは表面がざっくり削られて赤黒い血に染まっているからだ、と角都は悟る。不自然なほどきれいに残った半顔が、そばに膝をつく角都に向けてニッと笑う。なんかよ、息切らして誰かに駆け寄ってくのって恥ずかしいけどよ、駆け寄ってきてもらうのってのはなかなかいいもんだなァ。うるさい黙れと角都は唸り、ちぎれた腕を相棒の体の切断面に押しあてていつもの作業を始める。頭巾の下の耳が熱い。恥ずかしいことをした、とは思っているのだ。けれども似たようなことが起こればまた自分は同じことをするのだろう、とも思っている。どうにもしかたがない。