ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

楽しい野宿(ss)



誰もいない真っ暗な野原であたりをはばからず大っぴらにつがった後、相棒が空腹を訴え始めた。手持ちの食料はない、明日町に出るまで我慢しろと言い聞かせても、道に迷った仔犬のように情けない声で腹が減ったと言い続ける。いい加減うんざりしてきた俺は相手の口をふさいで唸る。うるさい、そんなに空腹なら指でもしゃぶってろ。ぶぶー、とふさがれた唇を震わせた相棒は俺の手をつかんで自分の口から引きはがすと、マジで超ケチだよなぁテメー、と文句を垂れ、そのままなんと俺の指を口に含む。あまりのことに俺はかたまってしまう。確かにしゃぶるべき指を指定しなかった俺にも問題があるが、だがしかし。そんな俺をよそに飛段は指をゆっくりとねぶり続け、やがて動きの鈍くなった舌を指に絡めたままスコスコと寝息を立て始める。今さらだが、野宿の何より優れた点は周りに店がないということだと俺は実感する。すぐに食料が調達できる環境であったなら、指の股が自分の弱点だということに俺は気づかぬままだったろうから。