ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

出来心(ss)



御託を並べて相手の恐怖心をあおっていた飛段が骸骨柄の顔に残忍な笑みを浮かべて杭を逆手に持ちかえる。死ねぇ異教徒め!最高潮を迎える儀式を興味薄く傍観していた角都だったが、ふと地に落ちていた刀を拾い上げると横なぎに振り、その刀の持ち主、今まさに飛段の贄になるはずだった男の首を刎ねてみた。タラタラ長い儀式にうんざりしていたし飛段が神の名を連呼するのも気に入らなかったし、まあその程度の軽い気持ちでやったことだったのだ。横取りされた獲物が倒れるのを見た飛段は目を見開いてあーっと抗議の声を上げたが、なぜかすぐに黙りこみ、そのままへちゃりと地に倒れて死んだようになった。そばに寄った角都が蹴ってみても、じきに肌の色が元に戻っても、動かない。死体とリンクしているらしい。フムああするとこうなるのかと角都は納得するが、なかなか生き返らない相棒に内心焦りを感じ始める。その後、やや時間をかけて蘇生した飛段はすぐさま相手を罵ろうとしたのだが、瞬きもせずに自分の顔を覗きこんで頬を撫で続ける相棒に怒りを持続させることは案外難しく、もう二度とすんじゃねーぞ、という甘い言葉でお茶を濁してしまった。しかし、しばらく後に今度は確信犯的に角都が同じことをしでかしたときは本気で怒ることになる。いくらその気になったといっても神聖な儀式の間ぐらい待つべきだろう。それに死んでるお前も悪くないがしまりがイマイチだなどと言われては怒らずにいられようか。