ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

中途半端な免疫(ss)



制作が一段落したので部屋から出てみたら、共用スペースの長椅子に角都がどっかりと座っていた。両手を腿におき、眉間に盛大にしわを寄せている。隣にいるのは奴の相棒の飛段だ。オイラは一瞬部屋に逆戻りしようかと考えた。こいつら二人に関わるとろくなことがない、単体ならともかく。それに角都の眉間のしわも気になる。奴は表情を変えないまま前触れなくキレるので、へたに巻き込まれると大怪我をすることになる。本気でやりあえば互角に戦える自信はあるが、君子危うきに近寄らずって言うだろう。そんなオイラの逡巡が見えたのか、よォ、デイダラちゃん、と飛段がひらひら片手を振る。呼ばれて行かないのも負けたような気がするから、オイラはさりげなく角都の前を遠回りして飛段側に近づく。相棒と対照的に飛段は満足気だ。なにやってんだまたゲージツかよ、よく飽きねーなァ。うるせーよ、てめえみてーな芸術オンチは黙っとけ、うん。何から何まで正反対なのにいつも一緒につるんでるなんて変な奴らだと思いながらオイラは相変わらず険しい角都の顔をちらりと見る。普段は鈍いくせに相棒のことになると妙に気がつく飛段はオイラの視線を読み、ん、と相棒を振り向いて、またこちらに向き直る。あー角都のヤローは寝てっから話はできねーぞ。寝てるって、そんな怖ェツラして寝るかフツー。だって手がホカホカしてっから寝てるはずだぜ、なあ角都。寝ている者に確認する飛段のめでたさ加減は置いといて、オイラは奴らの手元、正確には角都の太腿の上でしっかり握り合わされた二つの手に目を向け、げんなりとした気持ちでその場を離れることにする。オレも外行きてーけど手ェ離すと角都が起きちまうからまたあとでなー。背後から追ってくる聞きたくもない台詞から逃れようとオイラは足を速める。なんでうかうかと近づいたりしたんだろう、広い場所ででかい野郎が二人でくっつきあって座っている様子は異様に見えたはずなのに、残念ながらオイラはそれに見慣れてしまっていたらしい。