ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

禁制品(ss)



その国境の関所には出入りをする者が長く列を作っており、なんらかの審査を受けてから、やっとぽつりぽつりと関所の反対方向へ吐き出されるのだった。オレたちもずいぶん待たされた。退屈に耐えられないオレとしては待っている者の二、三人ぐらい贄にしてやりたいところだったけど、便所の中で角都になだめてもらうことで我慢した。辛抱しろ、と角都は言った。儀式は入国の後でやらせてやる、たっぷりとな。だからオレは後のお楽しみを胸に大人しく順番を待ったのだ。そうしてやっと会えた通行許可を出す役人は、もったいぶって紙にハンコをつきながらこう言った。道徳的な我が国へようこそ、ここでは酒も煙草も麻薬も禁止ですよ、見つけたらすぐに追放ですからね。…そりゃそんなこと言われて楽しいわけないよな、けどゴーに入ったらゴーに従えって言うだろ。なのに角都のヤローは、ああ用を足し忘れたすぐに戻る、なんてへたな芝居までして関所の外に戻り、店で酒と煙草とヤクを買い込み、それを自分の体内に隠して入国したのだった。そして今奴は宿の一室で目をキラキラさせて酒を飲んでる。日ごろやらない煙草とヤクも自分の前に置き、ときどきいじってニヤッとしたりしている。こいつ本当にS級犯罪者なんだろうかとオレは疑う。禁止されたことをわざわざやって喜ぶなんてどんだけガキなんだろう。おかげでオレの儀式は日延べになってしまった。実に不愉快だ。関所の奴らが儀式を禁止してくれりゃ今頃やりたい放題だったのに。じゃなかったら野郎同士のチューとかエッチを禁止するとかいろいろあるだろうが。なあ!