ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ふがふが(ss)



狭い室内は二人分の布団を敷くとほぼいっぱいになった。相棒から遅れて共同風呂から戻った角都は窓際に転がる飛段をまたいで窓を全開にし、蒸し暑い湯上りの熱を冷まそうとした。おりしも外では強い風が吹いており、室内はすぐに湿っぽいがすがすがしい外気で満たされた。快適さに眠るのが惜しくなった角都は道中で購入した古書を取り出したが、少し読み進んだころ、フガフガ、と相棒が言うので目を上げた。開け放した窓には寸が長すぎる古ぼけたカーテンがかかっていたのだが、お世辞にも清潔とは言えない薄物のそれが風でふくれあがり、大の字になって眠っている飛段の顔にかぶさっている。飛段はうるさそうにそれを払いのけるが、眠気がよほど強いのかそれ以上動くことはない。払われたカーテンはまたすぐに風でふくらみ、そのたびに飛段はフガフガと言ってやみくもに手を振る。いったん古書に戻った角都だがどうも相棒が気になり、結局は本そっちのけでフガフガを眺める。飽きることなく何度も何度も。馴染みがなさ過ぎて自分がそれを受け入れたことに気づかなかったが、角都は幸せだった。頭が空っぽになるほど幸せだった。