ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

遅刻の理由(ss)



打ち合わせの時間が迫っていて角都はもう行かねばならない。こんなときに限って飛段の甘え病が始まる。角都とてこんな飛段を残して行きたくはないが命令は命令だ。からみつく腕やきわどいところをこする太腿を押しのけて角都は服を着る。靴も履く。頭巾もかぶる。マスクをつけようとする角都に飛段がキスをねだる。なあ一回だけでいいからチューしてくれよ、そしたらおとなしく行かせてやるからよォ。気がせいていた角都は深く考えることなく要望に応えてやる。もぐもぐ、と口を食まれた角都は相棒から身を離そうとするがうまくいかない。飛段が角都の下唇をしっかりと咥えて放さないからである。はなせ、と下唇を伸ばしたまま命じる角都に飛段はかぶりを振る。はなせ。んーんーんー。はなせと言っているだろう。んーんーんー。甘噛みされた肉を左右に引っ張られ、角都は顔をしかめようとするが、その意思に反して目尻は下がる一方である。困ったことに。