ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ルールを無視する才能(ss)



換金所に入ったオレたちは、凄まじく荒らされた室内で半分死んで転がっている主人を見つけた。角都がそいつの体半分を死体を載せる台に載せてやり、服を緩めてやると、そいつはまだ半分生きてる口を開けて、ひそひそひそひそと息を出した。角都が誰にやられたかと尋ねても、真っ赤な白目を剥いてひそひそひそひそと息を出し続ける。オレは耳を澄ます。しにたくないしにたくないこわいこわいたすけてくれ。腹から下がちぎれていることを考えればそいつの生命力は大したものだが、その生命力が苦しみを長引かせているんだから厄介なことだ。角都もそう考えたのかもしれない、ズズ、と音を立てて硬化させた腕を半死半生の頭の上に鉈のように振り下ろし、消えかけの命を強制的に終わらせる。汚れた手をあたりに散らばった紙きれで拭う角都にオレは訊いてみる。そいつ死ぬのをえらく怖がってたけど、半殺しで生きてるより死んだ方がよっぽど楽だと思わねェ?死ぬのってそんなに怖ぇもんか?オメーどう思う?そうなってみなければわからん、と角都がそっけなく答え、お前はどうだと尋ね返してくる。つまらない答だけどそれが角都の正直な気持ちなんだろう。なのでオレも正直に答える。オレは不死だからよくわかんねぇけど怖いとは思わねぇな。そうか。うん、だってオメーが殺してくれるんだろオレを、だったら怖いも何もねえじゃねぇか。そしたら角都がオレを見た。こっちが何か変なことを言ったみたいにまじまじと。それからオレたちは荒らされた換金所で金を探したが見つからず、ちょっと喧嘩をした。角都の金への執着ぶりにはまったくつきあいきれない。割れずに残っていた一瓶の洋酒を回し飲みしてとりあえず仲直りはしたけれど。