ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

もったいない2(ss)



冷蔵庫にいろんな連中の飲みかけのペットボトルが何本も入っている。組織のリーダーであるペインは時々それを始末する。放っておくと衛生的にも良くないし、冷蔵庫内の冷えも悪くなるからである。ある日、開封した自分のボトルを入れようと冷蔵庫を開けたペインは、きつきつの庫内をかきまわし、しばらく前から入れっぱなしになっている甘ったるい炭酸飲料のボトルを取り出した。蓋に描かれたマークからすると飛段のものに違いない。外側のフィルムを剥がし、中身を流しに捨てようとしたペインは、鋭く呼ばれて動作を止める。背後からつかつかと近づいてきた角都はペインの手から件のボトルを取り、眺めてフンと言う。まだ飲めるものを捨てるとは若い者は贅沢で困ったものだな。だが角都よ、それはもう一週間以上放置されているぞ、残りも少ないし気も抜けているだろう。まだペインが言葉を続けているうちに角都は蓋を開き、古い清涼飲料水を飲み干す。その吝嗇ぶりに苦笑しつつも、さすがは倹約家だな、と素直に感じ入ったペインは、三日後に「ペ」と書かれたボトルからミネラルウォーターを流しにドクドクと捨てている角都を見て呆気にとられることになる。角都は言う。おい封を切った飲料水はその場で飲み切るのが常識だろう、中身はいたむし場所もふさぐ、少しは考えろ。ペインは開いた口を逡巡の末に閉じ、あいまいに首を振ってその場を去る。言いたいことはいろいろあるが、狂った価値観を持つ者に理を解いたところで仕方がない。何かと軽んじられることもあるが、ペインは忍耐も思慮もある人物だったのである。