ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

熱を冷ます熱(ss)



角都と飛段は二人がかりでどうにか相手を始末した。強い相手を儀式で屠った飛段はそれでも満足そうだったが、苦労して倒した相手が賞金首ではなかったので角都は不機嫌になる。納得がいかず何度もビンゴブックをめくってみるが、ないものはない。ビンゴブックの上に丸くかがみこんだままの角都の体は内からちくちく刺す熱い不満でいっぱいになる。とんだ無駄な労力と時間を費やしてしまった、骨折り損のくたびれ儲けだ、この鬱憤をどう晴らしてくれようか!まるで大きな蜂の巣のように怒りで堅く膨張する角都をよそに暢気に儀式を終えた飛段は、胸の杭を引き抜いて起き上がると相棒に向き直り、へええー、と頓狂な声を上げる。もしかして儀式の間ずっとそうやって帳面見てたのかよォ、まったく暇な野郎だなテメー。飛段はへらへら笑いながら立ち上がると、失礼な言い草にムッと殺気を放つ角都のすぐそばまで歩み寄り、その膝をまたいで、のしり、と腰を下ろした。流血しっぱなしだったその体がひいやりと心地よく冷えていて、角都は自分の意に反してつい両腕で飛段を抱きしめてしまう。コートの中を無遠慮に探られた飛段がくつくつと笑う。つい先ほどまで怒りのはけ口を探していたはずの角都だが、冷たい感触を貪るうちにエネルギーの向きが変わっていくのを覚える。ズボンをつかんで相手の尻をむき出しにした角都は、その下敷きになっていたビンゴブックをうるさそうに放り投げる。飛段が更にくつくつと笑い、角都のコートの前をはだけて肩の縫い目を舐め、その上機嫌は冷たい肌と熱い舌を介して角都にも伝染していく。さっきの対戦相手のことは忘れてやるとするか、と、やっと角都は踏ん切りをつける。金にならない者のことをつらつら考える暇があるなら、その時間をもっと有意義なことに活用すべきだろう。例えばこんなことや、こんなことに。