ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ころり(ss)



汚れ仕事のあと、角都が握り飯を飛段に渡さない。ちゃんと手を洗って食え、コロリになるぞ。コロリってなんだよ。腹壊して死ぬ病気だ。オレ死なねえもん。腹を壊しっぱなしで生きてて貴様楽しいか。そう言われると、それもイヤだな、という気がしてきて飛段は角都の水筒の水で手を洗う。木陰に胡坐をかき、渋紙で包まれた握り飯を受け取った飛段がおめーは洗ったのかと尋ねるが、角都は必要ないと答える。水の無駄遣いはできん、あとは飲用にしろ。水遁使えよ。必要ないと言っただろう、それにチャクラの無駄遣いなどできるか、バカめ。自分の衛生を優先されてしまった飛段は死者の血膿にまみれた相棒の指を見、渋紙を開いて二つ行儀よく並んだ大きな握り飯のうち一つを取るが、残りを膝の上に抱えたまま片手で握り飯を一口分割り取り、それを角都の目の前にかざす。ほら、あーんってしろよ、食わせてやるからよォ。角都はマスクを外しながら一瞬固まるが、逡巡の末、恐る恐る口を開く。ぽい、とそこに米飯のかたまりを投げ込んだ飛段は指先についた米粒を唇でつまみ取り、自分の口にも飯を運ぶ。ごく自然な飛段の振る舞いに対し、角都はぎこちなく地面に坐し、相棒の指と、その唇の動きをじっと眺める。再び運ばれる握り飯のかけらを食みながら、今日も暑いな、と角都は考える。ひどく暑い。まるで熱病にかかったように。