ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

負けるが勝ち(ss)



全力疾走してゴールに倒れこむように、放つ。男は単純だ。気持ちが良ければ出すし、出せば冷める。男同士だからそのへんはよくわかっている。だから、終わってからヒーハー言っているオレを何度もぎゅっとしたり髪を撫でたりチューしたりする角都を見ると、こいつ体力あるなあ、と心底感心する。一回やるだけでへとへとになるオレに余裕を見せつけているのかもしれないけど、続けざまにやってこっちが死んだようになっているときでもギューやらチューを欠かさないんだから律儀なことだ。初めのうちは負けたようで悔しく、さわんな、と意地を張ったこともあったが、正直なところ気持ちはよかったし、基礎体力もスタミナもスピードも劣っているオレが太刀打ちできる相手じゃないと悟ってからはされるままになっている。そんな降参状態のオレに角都が、お前にはかなわんな、などと言う。なにが、と訊き返そうとしたが口から漏れるのはおかしな声ばかり。それを吸い取ってしまった角都がまたもや、まったくお前にはかなわん、と言う。奴に翻弄されてこっちは指も動かせず舌まで出して喘いでいるというのに。頭のいい奴が考えてることはどうにもわけがわからない。